東京都写真美術館『世界報道写真展 2016』
今週23日(日)まで開催中の世界報道写真展、皆さんはもうご覧になりましたか?
現代ではネット上で世界中がすぐに繋がります。海外の行ったことがないような場所でも、名前を聞けばなんとなくイメージが思い浮かぶかもしれません。
それでも、現実の世界には知らないことがいっぱい溢れています。
世界報道写真展では、ニュースやネットだけでは見ることのできない、世界中の「目」が切り取った現実が写し出されています。
中でも印象的なのが、フォト・ジャーナリスト、小原一真さんが撮影した写真。1986年に生まれたマリヤという女性を写した写真には、たった一瞬を写したものでありながら彼女の人生そのものを訴えかけてきます。
1986年、チェルノブイリ原子力発電所事故の起こった5ヶ月後に100キロ離れた町で生まれたマリヤは、放射線障害のひとつ、慢性甲状腺炎に苦しみながら成長しました。小原さんが撮影したのは、そんな彼女の成長、30年の人生そのものでした。
小原さんはまず、今は無人となったチェルノブイリ原子力発電所のすぐそばの街プリピャチで、1990年代以前のカラーフィルムを見つけます。2015年4月、きっと被災して放射能を浴びてしまったフィルムを使って、小原さんは撮影を始めました。
かつて、人々の暮らしていたアパート。放射線症の患者を治療するための病院。そして、現在の発電所……。
旧式のカラーフィルムを現像するには大変な時間と努力を必要としましたが、ようやく出来上がった写真には独特の風合いがありました。
小原さんはそんな写真たちから、マリヤが経験してきたような“目に見えない問題”をみんなに想像してもらいたいと語ったそうです。
カメラマン個人のホームページに飛んでネット上で作品を見ることはできるかもしれません。しかし、モニター越しに見る世界と実際に見る世界には違った価値観が存在します。
是非、世界中のカメラマンが写し出した一瞬の時間を、実際に体感してみてくださいね!
こちらの展覧会については8月20日発行号の「FLYING POSTMAN PRESS」、関東版にも掲載中です!