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★report★東京都美術館にて開催中!『クリムト展 ウィーンと日本 1900』


東京都美術館で開幕した『クリムト展 ウィーンと日本1900』に行ってきました。

19世紀末ウィーンを代表する画家グスタフ・クリムト(1862-1918)。華やかな装飾性と世紀末的な官能性をあわせもつその作品は、いまなお圧倒的な人気を誇ります。

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1862年、金工師の父のもと、男3人・女4人の7人兄弟の長男としてウィーン近くのバウムガルデンに生まれたクリムト。自身はウィーン美術工芸学校に進学し、弟も金彫刻師になっています。しかし、1892年に弟の1人・エルンスト、そして父を相次いで亡くし、それによって母はうつ病を発症。

全8章だてで構成される本展の冒頭、1章「クリムトとその家族」では、その後、クリムトの作品の中で描かれ続ける「生と死」や「病」といったテーマの始まりを垣間見ることができます。

さらに3章「私生活」では生涯独身を保ちつつも、多くの女性と関係を持ったクリムトの姿も。「自分に関心がない、それよりも他人、女性に関心がある」とのクリムトの言葉が展覧会の後半で登場しますが、「女性」もまたクリムトの作品の中で描かれ続けるテーマの1つ。女性に宛てた手紙も展示されており、その人間性に触れることができます。

4章「ウィーンと日本」からは、“私たちのよく知るクリムト”の画風の片鱗が見え始めます。クリムトのもともと持っていた世界観に日本の要素が組み込まれることで、その独特の華やかさが一気に開花したように見えました。(実際に遭遇したことはありませんが・・、「ココ・シャネルが不意に部屋に入ってきて、一瞬で部屋の空気が変わった」ような感覚です。)

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会場でひときわ注目を集めていた作品が、官能的で恍惚とした表情を浮かべる《ユディトⅠ》と、裸体の女性がこちらを強く見つめる《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》。

《ユディトⅠ》は金箔をはじめて用いた作品とされているそうで、額縁はクリムトがデザイン、弟・ゲオルクが制作したものだそう。光に照らされ輝くユディトを見上げ、その美しさに、私は女性ですが翻弄されそうになりました。

《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》は、既存の芸術からの脱却を謳い、「ウィーン分離派」を立ち上げ描かれたもの。手に鏡を持つ裸婦。この2つは真実のシンボルなのだそう。そして、金箔を施された上部には詩人・シラーの詩が刻まれ、大衆に迎合せず真の芸術を目指す芸術家の態度を示しています。

これら2つの作品は、この後に展示されている《赤いスケッチブック》に、そのスケッチを見ることができます。手のひらサイズのかわいらしいスケッチに驚き。

そして注目なのは、《ベートーヴェン・フリーズ(原寸大複製)》。ベートーヴェンの交響曲第9番をテーマとした第14回ウィーン分離派展のために、壁画として制作された本作。そこには、幸福を求める人々から苦しむ人々、天使などが描かれています。最後の接吻の場面では、眩しいばかりに金箔が施され、大勢の女性たちがまさに歓喜を歌い上げているように見えます。会場では静かに「交響曲第9番」も流れ、その作品世界を堪能できます。

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展示作品の中で個人的にとても惹かれたのは《鬼火》という作品でした。鬼火とは夜の森や野原でみられる青や緑の光のことで日本では狐火と呼ばれているそうです。この超常現象をクリムトが女性として象徴的に表現したのがこの作品。かなり幅のあるシンプルな金枠の中に、青や、緑、ライラックといった色がまるで発光しているように織り混ざり、そこに描かれる女性と、星のように所々見える光が不思議な魅力を持っているのです。

クリムトの作品はどれも眩しいばかりに華やかでしたが、その華やかさは表面的ではなく、妖艶で、それでいて軽やかに、すっと取り憑かれるような魅力に満ちていました。

これだけ多くの画家がいるのに、同じ顔料を使っている他の画家もいるはずなのに、こんなにも「クリムトの輝き」に変わってしまうことが不思議です。

この不思議さは本物でないと見られませんので、この機会に存分に堪能しましょう^^

【展覧会情報】

開催期間:2019年4月23日(火)〜7月10日(水)

会場:東京都美術館

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